時効が完成する要件
1 金銭債権の消滅時効の援用についてお悩みの方へ
本ウェブサイトをご覧の方の中には、かつて貸金業者等から金銭の借り入れをし、何らかの事情によって滞納をしてしまい、消滅時効の援用をしたいとお考えの方が多くいらっしゃると考えられます。
そこで、本稿においては、金銭債権の消滅時効が完成する要件について、以下説明をいたします。
2 金銭債権の消滅時効が完成する要件
金銭債権の消滅時効が完成する要件は、2020年4月1日の民法の改正前後で異なります。
まず、2020年4月1日の金銭債権の消滅時効が完成する要件について説明します。
改正後の民法においては、消滅時効に関し、次のように定められています。
改正民法第166条(債権等の消滅時効)
債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき。
二 権利を行使することができる時から10年間行使しないとき。
(以下省略)
債権者が権利を行使することができることを知った時から5年が経過したときに債権は消滅するとされています。
金銭債権においては、弁済期が訪れたことを知った時から5年間で消滅時効が完成することになります。
また、債権者が権利を行使できる時から10年が経過したときにも債権は消滅します。
貸金業者等から金銭を借り入れた場合には、弁済期が到来したら、通常貸金業者等はそのことを知りますので、弁済期から5年間で消滅時効が完成すると考えてよいでしょう。
次に、改正前民法では、債権の消滅時効の原則的な時効期間を、「権利を行使することができる時」から10年と定めていました。
そして、当事者のいずれかが商人であった場合には、債権は5年間で消滅するとされていました。
消滅時効期間については、2020年3月31日以前に債権が生じた場合と、2020年4月1日以降に債権が生じた場合であっても、その原因となった法律行為が2020年3月31日以前にされたときについては旧民法が適用されることになります。
貸金業者等から借り入れた金銭の債権については、民法改正の前後にかかわらず、弁済期から5年間で消滅時効が完成します。
一方、商人ではない相手から借り入れた債権については、民法改正前に生じた場合や、その原因となる法律行為が民法改正前になされた場合、弁済期から10年が経過しないと消滅時効が完成しません。